ドーナッツの中心にある何か
ドーナッツという物体がある。まあ、誰でも知っているお菓子だ。
ドーナッツは中心に穴が開いている。もしドーナッツの中心に穴が開いていなかったとしたら、あそこまで皆に好かれるお菓子ではなかっただろうし、ミスタードーナッツだってとっくに潰れているだろう。つまり、あの穴のおかげで皆に好かれている。あの穴の中には皆に好かれる「何か」が入っているのだ。
穴は開けないほうが食べる量が多くなって得だと思うが、穴は開いている。開いていなかったらただの揚げパンだ。量を犠牲にして、食べられないが重要な「何か」を入れた。それがドーナッツである。だから好かれているのだ。揚げパンと、同じ大きさのドーナッツがあったら僕は迷わずドーナッツを選ぶ。
あの穴に入っているものこそ僕が求めてやまない、形にできない何かプライスレスなもので、愛とか、希望とか、そういうものだ。食べられない。
僕は、穴の中に入っているものが何かを確かめるべく、穴を覗き込んだ。