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笹倉及介の日記ブログ

美女と竹林

美女と竹林

美女と竹林


森見登美彦氏の随筆…らしいけど、どの辺までが本当でどの辺までが妄想かわからない仕様になっております。登美彦氏が主人公の小説と言ってもいいかもしれない。いや、良いのか知らないけど。相変わらずの古くさく愛らしい文体でお馬鹿なことが書かれており、読んでいるこちらはニヤニヤしっぱなしです。
テーマは竹林。登美彦氏は唐突に竹林を管理し竹を売って生計を立て竹林の一軒家で厭世的な生活をしたいと思い始めます。大学時代に竹の研究をしていたらしいです。で、竹林が好きだと。竹林にたいする愛がいっぱいの本になっており、読み終わったあとには、きっと竹林が好きになっていることでしょう。僕はなりました。たいへん興味がわきました。竹林に住みたいですね。

「竹林のざわざわする音に神経をかき乱されたりしたい。そして訪ねてくれる編集者の方々をからくり仕掛けで驚かせたり、不気味な昆虫料理を食べさせたりして遊んでいると、ついには誰も訪ねてくれなくなるでしょう。荒廃した屋敷の奥底で、目に見えない美しい妻と和やかに語らいながら、レゴブロックで青い壁を延々と作り続ける日々。そして、だんだん竹林が屋敷を浸食し始め、ついには……あれ、なんの話でしたっけ」

とても面白いです。「笑える」面白さでしょうか。そして後にはなにも残らない。ただただ楽しいだけで、充実した時間を過ごせますが、読み終わった後、この本を読んで得たものは何だっただろうか…と考えたとき、なにも残らず、ただ竹林が好きになるだけ…。だがそれが良い。