空飛ぶ馬
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/03
- メディア: 文庫
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最近は日常ミステリというジャンルが好きになってきています。この本もそうだった。北村薫という作家は全く知らず、この本が日常ミステリだと聞いて何となく読んでみたのだけれど、どうやら著名な作家であるようです。まだまだ読書遍歴が浅い。
文学部の学生である主人公と落語家の円紫さんが日常の中の謎を解いていくストーリーです。文学部と落語家ということで、僕が想像したことも興味を持ったこともないジャンルの人たちが出てくる。こういうのが小説での面白い所ですね。自分じゃ絶対に知らない世界を小説の中の登場人物達が体験してきてくれる。お陰で僕は文学や落語に興味を持ってしまいました。文学というのは、小難しい表現を用いた小説と言うだけではないんですね。
やっぱり僕の日常ミステリの楽しみ方は、「そんなの普通気づくわけがないだろう!」という謎に気づき、強引に「これは事件だ!」と仕立て上げ、色々あって「謎は解けた!」と言う所にあります。そういうところが楽しい。だって人が殺されていたら誰だって事件だってわかるし、密室だったら誰しも謎だと感じるだろう。そうじゃなくて、日常ミステリは事件に気づく人間の感度が試されているのだ。
僕の生活の中にだって、日常ミステリになり得ることはあるに違いないが、ただ僕が気づかずにボケッと生きているからそうならないのだ。でも日常ミステリを読むと、「謎はないかなぁ」と生活の中で思うようになるので、しばらくアンテナの感度が上がる。そうなると、色々ととても楽しいのだ。
ところでこの本は短編集です。僕のお気に入りは「砂糖合戦」と「空飛ぶ馬」という話でした。探偵役とワトソン役の二人の会話はとても温かくて好きになりました。