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笹倉及介の日記ブログ

恋文の技術

恋文の技術

恋文の技術

読了。相変わらずの森見登美彦といった感じてとてもおもしろかった。「相変わらず」というのはどういう事かというと、持たざるへなちょこ大学生の阿呆な片思い奮闘記を古くさい文体でかわいらしく書いてある感じです。よく分かりませんね。でも実のところ僕は森見登美彦の文体が大好きなんです。古くさくて愛らしくてひねくれていて微笑ましい文体だと思います。

書簡集という形をとった小説。主人公が書いた手紙だけで実際に何が起こったのかを想像するところがおもしろい。相手が主人公に対して書いた返事は書かれていない。黒ヤギさんのみ読める。主人公は上記の大学生の腐ったような、しかし憎めないやつで、実のところとても親近感が湧きます。いろいろ湧いて出てきます。

主人公の守田一郎は、友人の恋愛相談やら妹への近況報告やら、家庭教師をしていたときの教え子やらと文通をします。森見登美彦氏とも文通をしています。文通をしながら、意中の人に恋文を書き、自身の恋を成就させるために筆力を上げようとするけれど、どうにもうまくいかない。手紙とは一体なんぞ?どの様に思いを告げたらよいのか?袖にされるのはまっぴらだ!読んだ瞬間惚れてしまうような究極の恋文を書く技術を開発したい!そんな主人公の悩みと共にドタバタコメディが進んでいきます。笑える。そして最後にはやられた!と唸ってしまう。

この本は、自分を含め、ブログを書いている人たちや、ブログを論じている人が読むと、とてもいいんじゃないかと思います。私は何故このように役にたなない文章をせっせとこしらえ世界中の人が読めるような状態にしておくのだろうか。何故それが楽しいのだろうか。主人公はそれと似たことを考えているような気がした。でもたぶん気のせいである。僕のアンテナがそういう方向に向いているだけなのだろう。まあ純粋に楽しい小説なので読むとよろしいです。