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笹倉及介の日記ブログ

鉛直に立つ棒

直角というのは人間が手で作るのは難しい。必ず何かしらの道具が必要だ。三角定規だとか、水準器なんかだ。それなのに、杉といえば、かなり地面に対して垂直だし、杉の木同士は平行だ。凄く不気味というか、不思議なものだ。子供の頃に杉の木の林をはじめて見た時は、あんまり真っ直ぐでびっくりした。両親に、どうしてあの木はあんなに真っ直ぐなのか、ということを聞いたものだ。そのとき両親は、「杉の木はそういうものなのだ」と言った。なんというごまかしなのだろう、きっと父さんも母さんも、本当のことを知らないに違いない、ごまかしているのだ、そう思ったけれど、現時点で僕もそれと同じことしか知らない。杉はそういうものなのだ。

実は、写真が杉なのかどうか知らない。たぶん杉。かなり垂直だし平行だから杉でいいんじゃないかな。


大人になってからは、杉も不思議なのだけれど、電柱もなんだか変に思えてきた。だってあんなにもたくさん地面からはえていて、それがしかも、全部が全部垂直で、電柱同士は平行なのだ。全然倒れない。にょきにょきとはえている。

あんまり伝わらなさそうだから、補足する。例えば、鉛筆。あれは机の上に垂直に立てようと思えば立つ。でも、机の上に垂直に立てたまま家に帰り、次の日登校して、まだ立ったままだったら、凄く変な感じがすると思う。僕が言いたいのは、そういう不思議なことが、うっすらと世界中で起きていて、しかも、電線をたどれば、好きなあの子と繋がっているということだ。どういう経路にせよ、あの子が電気のない生活をしていない限りたどり着くのだ。これは凄いことじゃないか。電柱ってもしかして、人生の一里塚とか、それよりもっと重要な何かかもしれない。

ところで写真は電柱じゃない。葡萄畑の支柱です。たぶん。いや、林檎畑だったかも。

適当な写真がなかったのです。