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笹倉及介の日記ブログ

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ


まず始めに。読む前に、何故か「主人公は君のようだよ。君を思い浮かべて読んだよ」とか何とか言われたのですが、僕の子供時代はこんなに賢くもなかったし行動力もなかった。今もそうだ。だけど、これを読んでいるときは僕は主人公になっていたし、読み終わった後、この本の主人公のようにノートを片時も離さず、何かあったらメモをして、日夜研究に励み、昨日の自分よりも偉くなろうと思った。そう決意した。


この本はたいへん面白い。ひとことで言うならば「たいへん面白い」という言葉しか思いつかない。なぜかって、読めば分かるから読んでみればよい。読まないとわからない。たいへんお勧めの本だ。


主人公のアオヤマ君は、町に唐突に現れるペンギンの謎を解くために、考えたり、実験を繰り返したり、また考えたりと言ったことを繰り返す。そのうちに、ペンギンの謎は、歯科医のお姉さんと関係があるということに気付く。友達のウチダ君とハマモトさんもまた、別の奇妙な出来事について研究していたのだけど、アオヤマ君たちは徐々にその謎が全て同じものであるという事実に気付いていく。そうして冒険と研究を繰り返していくと、徐々に謎の全容があらわになっていくのだ。


これはたいへんいい話だ。子供の成長や、誰しも一度は考える、死の恐怖であるとか、異性との恋する気持ちであるとか、宇宙の神秘、生命の起源、人間の気持ち、不思議なことが詰まっている。主人公のアオヤマ君はたいへん賢く素直な子供で、しかも研究熱心であるので、正面から真面目に考え、その答えを探していく。アオヤマ君の姿勢は見ならいたい。大人顔負けだ。

そういえば、僕もアオヤマ君やウチダ君のように、小学校の頃、宇宙について考えたり、生命の起源について考えたりしていた。
自分の過去を振り返って、あの頃そんなことを考えていたから今の自分があると言える。とても重要なイベントだった。傍から見たら地味だが、あの時の僕の頭の中はすごいことになっていた。



森見登美彦にとって珍しい、腐れ大学生でもないし京都でもない小説だけれど、しっかりと森見っぽいところが残っていて、それはやはり小賢しく研究熱心で論理的な子供のアオヤマ君だ。

アオヤマ君のお父さんもたいへんすごい人で、アオヤマ君を的確に導く。

ミステリーとも言えるし、冒険小説とも、SFとも言える良い本だ。あと、アオヤマ君が実践していることや、アオヤマ君のお父さんからの教えはどこかの自己啓発書やビジネス書に書いてあっておかしくないような内容だ。たいへん欲張りな本だと言える。
結末を読んで、僕はたいへん悲しくなったし、たいへん面白い小説で、読んで良かったと思った。