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笹倉及介の日記ブログ

トークセッション「現代SFの読み方 国内編」に行ってみた

長野県は高遠で行われた、表題のイベントに行って、すみっこのほうで体育座りで話を聞いていた。ふむふむなるほど、そういうことか、などと勝手に納得し、楽しく聞いて自己完結。帰宅し秋晴れの行楽日和を外にも出ずに写真のraw現像に大半を費やし、だらだらと過ごしていた。そうしたら、主催者であるKASUKA氏からレポを書いてくれというの依頼が。「報酬は出す」とのことだが、それはさらりとお断りして、いろいろ思うところがあったので、僕なりに少し書いてみようと思う。

どのようなイベント?

80年代生まれの若きSFファンがゼロ年代の国内SFを俯瞰し、伊藤計劃の次に読みたい本を語ります。来場者にはブックリストをプレゼント。
トークセッション「現代SFの読み方 国内編」

ここで3人にid callをさせて頂く。偶然にも全員はてダユーザーだった。 id:KASUKAid:GG-aid:funa-1g (敬称略)

だいたいの話していたテーマ(覚えていたもののみ)

  • 伊藤計劃はどのような作家なのか、著書「虐殺機関」「ハーモニー」の紹介

伊藤計劃の書いたSFをそれぞれのSF観においてどのあたりの座標に位置するのか、著書および遺稿の紹介、病死による神格化など、さまざまな考察を交え、一般にわかりやすいように解説をしていた。

  • 「あなたのための物語」の紹介

伊藤計劃の次に読みたいSF小説として、長谷敏司の「あなたのための物語」を挙げていた。「とても読みにくく、暗い気持ちにさせるが、読んで損はさせない」と3人の意見は一致。「死について真面目に考えきった小説」というフレーズを覚えています。「死について書いた小説は、結局は裏返って生きることの素晴らしさについて書いたものが多いが、この小説は、最後まで死について真面目に考えている」とのこと。「本当に伊藤計劃の次に読んでしまうと、暗い話の連続で心が衰弱してしまうと思うので、万城目学を間に挟んではどうか」という話を、終わったあとで一緒に聞いていた知人とする。

床下からフロイトが大量に出てくる。わけがわからないけれど、なんだかおもしろい。とにかくトリッキーな作家で紹介がとても難しいと3人とも説明に困惑しつつも、それでもブックリストに2冊も入れており、かなりおすすめの作家のよう。僕も円城塔はお気に入りの作家で、伊藤計劃よりも好きなので、円城塔の話題はかなりおもしろかった。円城塔の深い読み方を得ることが出来て、非常に良かった。文庫版boys surfaceには円城塔が書きたかったものがヒントとして挿絵になっているということを知り、これが一番の収穫だった。

  • ブックリストの素晴らしさ

「これさえ持ち帰って貰えれば、僕たちの話はオマケみたいなものだ」とKASUKA氏。きっと氏のブログにアップロードされると思う。

思うこと

業界の一つを俯瞰し、深い話ができる、というのは、すごいことである。僕自身、SFは好きで読んでいるので、ブックリストに挙げられていた、3人のおすすめ小説も、10/19で既読だったのだけれど、3人のようなトークはもちろんのこと、全然SFを俯瞰できてない。いかに自分が浅い読み方しかしていないか、ということを思い知らされた。彼らと僕の違いは、その小説を読むだけで完結せず、その小説の周囲を取り囲むもの、著者のバックグラウンドや影響を与えた作家を知り、参考文献の検証などを行うことを自然にやっている/いないということだろう。「愛ゆえに」という純粋な気持ちから気づいたら自然とそうなっていた、という人たちが得る世界を垣間見た気がする。まだまだ僕には愛がたりないね。