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笹倉及介の日記ブログ

探偵伯爵と僕

探偵伯爵と僕 His name is Earl (講談社文庫)

探偵伯爵と僕 His name is Earl (講談社文庫)


おすすめ!
この本読んだはずなのだけれど、どこにも記録が残っていないのですね。とってもおもしろかった記憶があって、そのときはハードカバーで読んだと思ったのだけれど、どこにもないので、きっと図書館で借りて読んだのだけど、感想文も書かずにいたのだろうなぁ。と思っている。文庫を古本で手に入れたので、改めて読んでみた。

夏休みに少年が自分のことを伯爵と名乗るちょっと怪しいおじさんと出会うところから話が始まります。ちょうど、夏休みのシーズンだし、今読むことができて良かった。わかりやすくて涼しげな文体だし、暑い時期にぴったりだ。伯爵は変質者なんじゃ…と思いつつも読み進めていくと、伯爵かどうかはよくわからないけれど、探偵であり、お金持ちで大きな会社の社長であるということがわかってきて、ちょっと変なところもあり主人公の新太君は伯爵と仲良くなる。伯爵はとある事件を追っていて、その事件に友達が巻き込まれてしまい、新太君と伯爵は一緒に犯人を追跡します。

小学校の時の夏休みの大冒険のような、探偵物のような、不思議な感じですね。主人公の日記という形で述べられており、小学生ということもあり、文体もわかりやすく、また、いつも通りの森博嗣ぶりで爽やかでスッパリと切って捨てるような文章が魅力的です。とても爽やかな読了感のなかに驚き、気づきが沢山あります。軽く読めるしとてもおすすめです。

この小説の中では、事件の犯行現場に残されたトランプが出てきて、非常に意味ありげだけれど、伯爵は「そんな物は重要ではない」とすっぱり。テレビやミステリ小説ではこういう物は重要視されがちだけれど、現実には違うということを小説の中の登場人物から言われる。
この辺は森さんの小説を読んでいる人ならば、何度もこの考え方に触れると思う。森さんはいつもぶれていない。伯爵のセリフは気づきに富んでいる。わかっているつもりで当たり前だと思うようなことでも、小説の中の登場人物に改めて言われると、全然わかっていなかった、ということがありがちである。

「そうだ。それが、現実の不確定さだ。テストの答えのように、絶対に正解だと断定することはできない。だから、いくつもの条件を組み合わせて、一番怪しい人間を絞り出す。たとえ捕まえたあとでも、いろいろ調べて、本当にその人間がやったことかどうかを確かめてなくてはいけない。そういった作業が、まだこれから続くんだ」

これは伯爵が犯人に目星をつけた理由を答えて、主人公の新太君に「でも、偶然かもしれないでしょう?」のような反論をされてのセリフ。

まさにそうだ。現実は不確定であり、なにひとつしっかりとした答えはない。いろいろな傾向があって沢山の物が少しずつ同じ方向を向いているとき、初めてそれが答えと言える、かも…くらいしか言えないものだ。最近それをすごく実感している。
でも僕はまだまだ単純に物事を理解しがちで、「こうだから、こうだ!」と思いがち。よく上司からも、「君の言うとおりなのかもしれない。けどそうとも限らない。もしかしたらこうかもしれないし、こういうこともあり得るよね」と言い負かされる。

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