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笹倉及介の日記ブログ

常識にとらわれない100の講義

常識にとらわれない100の講義

常識にとらわれない100の講義


森博嗣氏のエッセイ。一つの単文のテーマがあって、そのことについて2ページの文章でまとめられている。僕はこの本を読んで、わりとまじめな話題だなーと思ったので、エッセイというか、評論とかコラムと言っても言いかもしれない。でも評論というには散文的だし、コラムというのは新聞や雑誌の欄外にかかれた主題とは関係の無いこぼれ話的な文章のことを言うのであって、それを一冊に集めたらコラムではなくエッセイと呼べる。だからたぶんこの本はエッセイだ。

あいかわらず森博嗣氏の言っていることは一貫している。ブログやウェブ日記の頃とあまり変わっていないようにも見えるけれど、変わっているような部分もある。僕としては、同じことを言い続けるのは重要と考えていて、森博嗣氏が細かいところは違えどいつも同じことを言ってくれたり、ちょっと違ってきたりする文章を読むのは、定点観測というか、自分がどのように変わったのか、というのを意識できるような気がする。「前に似たようなことを森博嗣が言っていたのを読んだときは、確かこう考えたのだったなぁ。でも今はちょっと違うなぁ」という感じ。
森博嗣氏の、日常の中で気づいたことや、社会問題について、仕事についてなどのエッセンスが読める。ファンの人は、今更というような内容ばかりかも知れないけれど、それを確認するために読んでも面白い本だし、ファンでない、森博嗣未体験の人にとっても新しい視点が沢山舞い込んでくるような本だと思うので、おすすめです。気楽にパラパラ読むのにも不具合がない。
この本は2ページ単位でばらばらになっているので、どこから読んでも不便がない。開いたところから読むというのも可能だけれど、そういうことはどこを読んでいてどこを読んでいないのかがわかりにくいので、普通に読んだ方が良いと思います。本にはいろいろ読み方があるのだけれど、「今日はどのように読もうか?」と考えるよりも最初から1ページずつ読んでいった方が効率が良い。この本の中にも、「つべこべ言わずに、やればいい」ということが書かれていた。でも本の読み方についてではなかった。

気になった五編を書いておこう。

  • 忘れることは、抽象化の一つである。
  • 面倒だな、と思って嫌々やったことが、振り返ってみると成功の鍵だった。
  • 本が早く読める、酒が沢山飲める、ということで自慢する人がいる。
  • 「ちやほや」という言葉は、不思議な雰囲気を持っている。
  • どうして貧乏になるのか、それは人にやらせているからだ。

とくにお気に入りが「ちやほや」ですね。「ちやほや」ってなんか怪しげな雰囲気の言葉だから辞書を引いてみたら、「ちやほやほめそやす」という例文が載っていて、「ほめそやす」って何だろう…。という内容から始まる話なのだけれど、こういう疑問や言葉に対する不思議な感じというのは僕も結構思うことがあるのだけれど、森博嗣氏自身の切り口がとても面白い。これを売り物にするくらいに完成度を上げられるというのは憧れる。