「告白」読んだ感想
- 作者: 町田康
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 184回
- この商品を含むブログ (132件) を見る
リズミカルな文章がとても読みやすい。するする読めて長いのもあまり気にならなかった。単行本だったから、物理的に取り回しがやり難かったけれど。
物語としては、「河内十人斬り」という事件が題材になっている、ということらしかった。どのような事件なのかは知らない状態で読んだ。物語の半分くらいまでは主人公熊太郎の人生が語られる。
主人公熊太郎は自分の思っていることが言葉に出てこないと自分では悩んでいるけれど、自分の考えがそのまま言葉になってそれを喋っている人なんかいるのだろうか?と思う。ひょっとしたら僕だけかもしれない。たまに、「こいつは口から先に生まれてきたのだなあ」と思うような弁舌の滑らかな奴がいるけれど、そういう人の思考はどうなっているんだろう。ラジオのパーソナリティとか、コメンテーターなんかはとてもわかりやすく話しをしてくれる。そういうのに憧れる。結局のところなんでも、誰かに伝えるのが社会を回してる全てだから、伝えることは上手くなりたいと思う。
熊太郎は物語終盤に人を殺す。この小説の大部分はその「殺す理由」を描くために費やされている。そう書くといかにも暗そうな小説のように聞こえるけれど、全然そんなことはない。関西弁の軽い会話の掛け合いであるとか、突然入る筆者目線のツッコミなんかが軽妙で楽しい。主人公の半生がだらだら続いてバテそうになると思いきや、全然そうはならないのですごく巧みだと思う。
かなりボリュームのある小説だったが、読んだあとに心の底から読んで良かったと思える。名作でした。