あのときの王子くん(青空文庫) 星の王子さま
- 作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,内藤濯
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/03/10
- メディア: ハードカバー
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青空文庫で星の王子さまの新訳が、「あのときの王子くん」という題であったので、読んだ。こんないいものが無料でデジタルで公開されていて、誰でも読めるというのは素晴らしいことだ。上のリンクはアマゾンだけどね。
いい大人が絵本かよ、と思わなくもない。それに、いまさらこんな超有名な作品を引っ張り出してきてこんな場所で感想を書くなんて、何様なのだと思うが、そんな自分の別人格は闇に葬り、読んでみると、これがなかなか読みごたえがある。「子供からみた大人のへんなところ」が書かれていたりするが、これはもしかして、子供向けを装った大人向けなんじゃないか?子供に読み聞かせてもこれは分からないかもしれない。というか、僕が子供の頃は分からなかっただろう。今だって分かっているのかどうか分からないけれど。
個人的にとても気に入ったのは、話の中に出てくるキツネの言葉だ。真理をついているようだった。
「おいらにしてみりゃ、きみはほかのおとこの子10まんにんと、なんのかわりもない。きみがいなきゃダメだってこともない。きみだって、おいらがいなきゃダメだってことも、たぶんない。きみにしてみりゃ、おいらはほかのキツネ10まんびきと、なんのかわりもないから。でも、きみがおいらをなつけたら、おいらたちはおたがい、あいてにいてほしい、っておもうようになる。きみは、おいらにとって、せかいにひとりだけになる。おいらも、きみにとって、せかいで1ぴきだけになる……」
「まずは、おいらからちょっとはなれたところにすわる。たとえば、その草むらにね。おいらはきみをよこ目で見て、きみはなにもしゃべらない。ことばは、すれちがいのもとなんだ。でも、1日、1日、ちょっとずつそばにすわってもいいようになる……」
「おんなじじかんに、来たほうがいいよ。」とキツネはいった。「そうだね、きみがごごの4じに来るなら、3じにはもう、おいら、うきうきしてくる。それからじかんがどんどんすすむと、ますますうきうきしてるおいらがいて、4じになるころには、ただもう、そわそわどきどき。そうやって、おいらは、しあわせをかみしめるんだ! でも、でたらめなじかんにくるなら、いつ心をおめかししていいんだか、わからない……きまりごとがいるんだよ。」
こういう文章は、「言われてみれば、確かにそうだ」とはっきり言えるのだけれど、言葉にするのが難しい。それを絵本で、子供向けのやさしい文章でやってしまうのだから、すごいのだろうな。こういう、「難しいことを、やさしく伝えられる人」にはあこがれる。