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笹倉及介の日記ブログ

全てがヤバくなる

 最近の若者の言葉に、「ヤバイ」というものがある。どんな意味かっていうと、「すごくイイ」もしくは「すごくヨクナイ」である。つまり、プラスなこととマイナスなこと、どちらにも使える強調の言葉である。本来の意味は、「危ない」や「具合が悪い」だったと思う。昔はあまり使われなかった気がする。ドラマとか、漫画の世界でしか使われなかったんじゃないかな。
 それはともかく、僕は、自分で言うのも何だけど、最近の若者なのだ。けれどこの言葉は、本当によくわからない。自分でもこの言葉を使うことがあるけれど、でも僕はマイナスのことにしか使わない。
 この言葉のヘンなところは、言葉を強調するのではなく、その言葉に対して、言葉を強調したいときに置き換えられるというところだ。

  • とても美味しい→ヤバイ
  • とてもかっこいい→ヤバイ
  • とても美しい→ヤバイ
  • とても面白い→ヤバイ

こんな感じ。全てがヤバイに置き換わる。これはプラスなことだが、マイナスなことでも当てはまる。

  • すごく不味い→ヤバイ
  • とても醜い→ヤバイ
  • とても汚い→ヤバイ
  • とてもつまらない→ヤバイ

 他にも使い方はあるのだけれど、*1とにかく、この使い方が面倒なのだ。例えば、買ってきたお菓子をみんなで食べているときに、A君がとても美味しいと思ったとする。でもB君はとても不味いと思った。そうすると、
A「これヤバイね、味が」
B「ああ、これはヤバイ」
と、こうなる。
これですれ違いが起こる。A君は、B君も美味しいと思ったのだろうと勘違いし、B君は、A君も不味いと思ったのだろうと勘違いする。実際にはもう少し会話は続くだろから、いずれは誤解は解けるだろう。続きは、
B「ああ、これはヤバイ。なんて味だ」
A「ん?美味いよな?」
B「え?不味いよ!」
と、ここで誤解は解けるのである。何たる回り道、二度手間、カロリーの無駄使いなことか。
 そして、僕は「ヤバイ」をマイナスの意味でしか使わないが、プラスの意味でも使う人が結構居るというのはわかっているので、
A「これヤバイね、味が」
と言われたら、
僕「え?美味いの?不味いの?どっちなの?」
と、こうなる。その人の顔色とか話し方などで見当が付く場合もあるが、分からない場合は聞き返してしまう。同意を求められているのに、聞き返してしまうのがめんどくさいし、なんだか申し訳ない気持ちになる。わかってやれなくてごめんよ、という気持ちになる。
「すごく美味しい!」と言われて、僕も美味しいと感じたら「そうだね!」と返せるし、逆に僕は不味いと感じたら「え?不味いよ!」と返せるというのに、何故こんな言葉が流行っているのか。
 まあ、会話のキャッチボールが一回か二回増えるのは嬉しいので、実はそんなに気にしていない。でもヘンだ。 全てがヤバイに置き換えられるので、使い続けると、感情が「ヤバイ」しかなくなってしまうと、そんな気がする。
 気を付けなければならないことは、「ヤバイ」は話し言葉で、書き言葉ではないということだ。ヤバイという言葉を文章で通じるようにするには、その場の雰囲気やその人の態度などが、正確にわかるように描写する必要がある。それができないと誤解が生まれてしまう。チャットや掲示板などは、話し言葉をそのまま字にしたような文体を使うことがあるけれど、「ヤバイ」を使うときは注意が必要だ。

*1:「寒さがヤバイ」など