南極点のピアピア動画
- 作者: 野尻抱介,KEI
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/02/23
- メディア: 文庫
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この小説のピアピア動画とは、ニコニコ動画だ。ニコニコ動画にはお世話になっている。主にvocaloid関係だが、ニコニコ技術部も大変楽しんで見ている。そういう僕にとって、この小説は、もう聞き飽きた、考え飽きた、出尽くした、そういう話が書かれているのだろうと思った。この小説は短編連作だが、一話なんかは、ニコニコ技術部だったりMMDだったりで一度は動画になったようなものを再度小説にしているだけのように思えた。SFマガジンで掲載されたときに1話を読んだのだが、今回はあんまり面白くないなぁ…などと思ったりしていた。
しかし、その続きがスゴかった! 完全に裏切られた。良い意味で。こんなにも直球で、こんなにもご都合主義で、こんなにもニコニコ動画そのまんまだとは! しかもニコ厨の夢の展開とも言えるような最後で、こういう小説読みたいなーと思っていたそのまんまだった。現実と地続きで、すぐにでも実現しそうな、ギリギリのところでフィクションというのが、「実現させてやろうではないか!いますぐやったろうじゃん!」という気持ちにさせてくれてとても良い。明るい前向きな未来が描かれていて面白かった。
ニコニコ動画からコンテンツがユーザー手動で広がり、とくに中心人物が居るわけでも無く、自然発生的に世の中に影響するようなコンテンツが生まれてくる様子は十分にSF的だ。そういったことが現実に起こっている不思議さ、おもしろさを一般に伝える形でひとつにまとめ上げた尻Pこと野尻抱介氏はすごいなー、と思う。「ほんとに書いちゃったよwww」的な意味も含め、そういう冗談が通じるのがニコニコ動画であり、SFなんだよなきっと。