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hakanashika

笹倉及介の日記ブログ

ふわふわの泉

読書

ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

いやー、おもしろかったなー。おすすめ。
化学の好きな女子高生が新物質を見つけ、それで一生働かなくてもよいようになれば良いな!という動機でお金を得ようとするところから物語が始まるんだけど、新物質が偶然できたところのわくわく感は、僕が大学にいた時を思い出して、共感できたのだった。そうして夢の新物質を大量生産することに成功して巨大企業に成長するとか、ご都合主義も良いところだ。普通の女子高生がいきなり億万長者になって、世界のエクセレント企業のCEOに就任してジョブズ的なワンマンだけれどカリスマな経営を行うなんて、都合がよいにもほどがあるけれど、そこで現実的な壁(たとえばビジネスの競合他社が現れるとか、海千山千の大人たちとの腹の探り合いで乙女の涙をみせるとか)にぶち当たらずに、SF的な壁を用意するのが野尻さんの小説のよいところだ。
こういう気持ちのよい、自分が読みたいようなSFは野尻抱介が群を抜いていると思う。まあ僕の守備範囲が狭いのかもしれないけれど、たとえば円城塔なんかの小説は、おもしろいし好きなのだけれど、僕のSF欲を満たしてくれるかというと、そうではないと思う。やはり野尻抱介が僕の読みたいSFなのである。
なぜなのかと自問自答してみると、やはり、現実の技術や科学に則っているというところと、すぐにでも現実化しそうな未来が描かれているというところだろうか。自分でも実現できそうな、すぐ隣にある未来というのが良いのだろうと思う。
ところでこの小説では「立方晶窒化炭素」という物質が出てきていて、空気よりも軽く、ダイヤモンドより軽いという設定だ。「空気よりも軽くダイヤモンドよりも堅い固体です」と言われて、それがどういう挙動を現実世界で示すか。僕は想像できなかったのだけれど、小説を読んでいて驚かされた。びっくりである。「確かにそんな性質のものが現実にあったら、こうなるだろうな…」とは思うものの、現実にはあり得ないだろうという不思議感。でも、一応理屈は通っている(ように見える)。常識を塗り替える新物質だ。

そうそう、この小説は南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)と共通するようなところがいくつかあって、それは野尻さんも後書きで述べているけれど、ピアピア動画を読んでおもしろいと思った人ならば、絶対に読んで損はないと思うので、おすすめです。

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

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