ストレンジボイス
- 作者: 江波光則,李玖
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/01/19
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 124回
- この商品を含むブログ (35件) を見る
文化系トークラジオLifeというラジオ番組で、パーソナリティの鈴木謙介氏がいつだったかに紹介していて、おもしろそうだなーと思って購入。
すごく面白かった。といっても、内容は非常に絶望的な小説で、登場人物はみんなどこかに傷を負っていて、誰一人としてハッピーエンドにならないような話だった。
ありがちな学園生活をデフォルメしつつうまく切り取り、負のイメージを増幅した感じで「実際にありそう」な感じ。
いじめに遭って登校拒否になってしまった少年が、いじめた直接原因となった少年に復讐を計画する。いじめた少年は少年で狂っていて、他人に暴力をふるうことが快感であり、まったく暴力に対して躊躇しない。主人公の女の子は、周りを過剰に気にしていかにそつなく学園生活を終えるかに執心する第三者的な立場を取っており、二人のいじめた/いじめられた少年達の間を取り持つような仲になる。その3者の関係が最終的には何も解決がしない結末になってしまう。
その人を殺すために生きる、というのは、要は裏返すと、「その人のために生きる」「その人に担保されたアイデンテティ」ということで、憎い人のために生きるというとても虚しい生き方だよなぁ、と思った。
ホントに不幸な人たちの話なのだけれど、文章が良いのかどうか分からないけれど、さわやかな読了感だった。何一つ解決していないのにもかかわらず、とても良い終わり方だったと思う。