一人称による世の中の観測 少し変わった子あります
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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相変わらず森博嗣の観測は冴えていると思う。
短編連作形式で、ストーリー性は無い。ある変わった形式の料理店に先生が行き、そこで食事をして終了。その料理店は、食事と共に女の子が出てくる。その女の子に何かするわけでもなく、一緒に食事をして、話をするだけ。女の子個人のことは聞いてはいけないし、触ってもいけない。ただ本当に食事をするだけだ。そんな不思議な料理店の話、ではなくてそこへ行く大学教授の話だ。その教授の一人称で話は語られるのだけど、この人物の観察眼というか、人生の分析とか考え方とかがとても素敵だと思った。
全てではないが、付箋を貼ったところを引用する。
真面目とは、つまり穏やかさを指向する性質のことだその結果として得られるものは、穏やかな人生。つまり、平凡さなのだ。
なるほど。
芸術が成立する条件とは、第一に、それが人間が成したものであること。第二に、無駄な消費であること。これが私の定義である。
ということは、僕がしていることは全て芸術だな。
なにも見ず、なにも読まない。ただ、じっと座って、私は考える。なにか特定のことを考えようとは思わない。ただただ、考えよう、頭の中に思いつく情景、風景、景色、それをじっくりと見よう、と目を凝らす。神経をだんだん集中させていく。しばらくすると色々なものが同時に私の目に飛び込んでくる。
そういえば、僕はなにもせず「考える」ということに時間を割くということはしない、というかできない。なにか考えなければならないものがなければ、考えられない。「考える時間」というのはとても重要なことで、これができるかできないかで、今後の人生の豊かさというか、人間の豊かさのようなものに関わってくるのではないか?意識して「考える時間」を作ってみると幸せになれるのではないか?この部分を読んで、そんな気がした。