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笹倉及介の日記ブログ

普通の存在って結構魅力的だよね 世界の中心、針山さん2


 針山さんは面白いなぁ。ライトノベルだからって一歩引いてしまうような人たちにだって、この小説なら全力で薦められるね、躊躇なく。
 まず表紙が好き。出てくるキャラクターが全てごちゃごちゃと入り混じるような、こんな感じの表紙は好きだ。格闘ゲームのパッケージみたいな。内容も、かなりツボだ。こういう王道をちょっと斜めから見たような、メタ王道とでもいうような話はとても好みだ。あと、針山さんだ。
以下少しネタバレかもしれない。
 この小説が面白いのは、針山さんによるものが大きい。「そりゃあ、主人公だもの」と言われればそうかもしれないけれど、この小説において針山さんは何もしていない。ちょこっと顔をはさむ程度だったり、名前だけが出てきたりするだけで、本当に何もしていない。針山さんが出でこなくても話は成り立つ。ちょっと強引に針山さんが出てきていて、むしろ出ないほうが良かったのでは…と思うようなところもある。だけど、この小説は「針山さんが出てくる」ということに意味がある。「彼はいつ出てくるのだろう?」という期待させる機能。普通でどこにでもいるような存在という、読者に親近感を与え、物語に入り込みやすくする機能。短編だけど、全て同じ時代の狭い地域での話だと実感させる機能。色々と、針山さんはすごいやつだ。